2002年1月25日刊行《週刊金曜日》より筆者及び出版社の許可を得て掲載します。

T・ラズロの多文化ニッポン見聞録 (4)
 
家族の中の外の人 住民票と外国籍住民
 

 「この写しは、世帯全員の住民票の原本と相違ないことを証明する」
 
 「住民票」には一般的に、この文章が書かれている。居住関係と身分を証明する、住民の暮らしに欠かせない書類だからこそ、役所の言うとおり、「世帯全員」の名前が漏れなく、きちっと明記されていると信じたい。だが、信じてはならない。外国籍の世帯員名は、明記されないようになっているからだ。 
 
 『住民行政の窓』(注1)2001年10月号には、参考になる説明が書かれている。「居住関係の公証は(日本人は住基法に)基づき住民票の記載により行われており、一方、(外国人は)外国人登録法(外登法)に基づき外国人登録原票の記載により行われている」 
 
 日本の法律では(住民基本台帳法10条)、外国人を含めて特定の地域に居住する者はみな住民だ。それなのに、外国人だけは日本国籍を持つ家族のメンバーと違って、別管理される。日本人と外国人の「混合世帯」は日本に約30万世帯。将来、日本で暮らす可能性が高い海外在住「混合世帯」を含めると、これは約100万世帯になる。
 
 これによって、混合世帯が「父子家庭・母子家庭」、あるいはその夫婦の結婚は合法でないものとして見なされがち。学校で子供がいじめにあう原因になる例もあれば、夫婦としてローンを組みにくい例もある。そのほか、トラブル事例多し。
「(このような)不合理な差別があってはならない」 
 
 公明党代表代行である浜四津敏子氏は、上記の問題を抱えている住民から状況を聞いて、総務大臣政務官(当時)の山名靖英氏と会談した。
 
 その結果、「(記載の)取扱方について周知が不足である(と山名議員に指摘され)・・・・・(『住民行政の窓』の記事を通じての対応を)決定した」(総務省)。以前から、総務省は住民票の「備考欄」(注2)への外国人配偶者の名前の記載は「あっても差し支えはない」とのスタンスをとってきた。しかし今回、『住民行政の窓』で「当該住民から要望があった場合については、原則記載することが好ましい」と、より明確な対応を自治体に呼びかけた。
 
 大阪府寝屋川市をベースにする「サクティ会」(厨川豊代表)の最近の調査によれば、同府では、外国籍配偶者から要望があってもその氏名を備考欄へ記載しない自治体は大半を占めるが、『住民行政の窓』発行以後、2つの市町村が方針を変えた。
 
 群馬県前橋市は去年6月から、外国人配偶者の名前を備考欄へ記載しはじめた。配偶者でない「混合世帯」の外国人世帯員名も備考欄へ記載できるように要領を作成中であり、2月中実施に向けて検討中でもある。
  
 「一番のメリットは外国人を含めた、住民の信頼が得られることだ」と前橋市の職員は言うが、「住民票を扱う住民基本台帳事務は基本的には自治事務になり、住基法に明確に記載されていない部分については市町村の判断になる」との方針だ。
 
 一方、去年12月、「『住民行政の窓』を片手に備考欄への記載を熊本市に要望したルシンダ大塚氏は、きっぱりと断られた。「市町村判断」の方針が、長年、地元住民による反対運動の対象だった熊本市は、今回の『住民行政の窓』の記事も「あくまでも筆者の個人的見解」として考え、今後も住民の要望に応じない構えだ。
 
 「そもそも住民票においての『備考』になるのは変な話だ。確かに、問題の一部解決にはなるが、家族の一員としてちゃんと住民票に明記されるべきではないか」と大塚氏は憤る。行政書士の島田雍士氏も頷く。「たとえ、備考欄記載が確立しても、住基台帳には(外国人世帯員の名前は)記載されないので、外国人は『幽霊』のままだ」
 
 山名・前総務大臣政務官は「(通達など)さらに指導性のある徹底を計るよう取り組む。また、(住基法39条)の改正を目指す」と公約している。
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ルシンダ大塚さんは、またしても拒否された。「町の『国際化』政策はこういうところでもって評価されるものだ」と言う。
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注(1)市町村自治研究会(総務省自治行政局市町村課内)の編集協力で、日本加除出版から発行されている。主な読者は自治体職員。
注(2)「法定記載事項ではなく・・・・住民票の記載などの処理経過を記載したもの(2001年10月号『住民行政の窓』)。
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写真と文 T・ラズロ
日本在住ジャーナリスト。NGO「一緒企画」(www.issho.org)代表。
W杯に関するガイドブック作成に関わっていて、今春に講談社から出版。32の参加国代表チームの内、私が日本から情報を最も入手しにくいと思われる9つ(さあどこでしょう)の取材を頼まれた。取材の過程で、いたるところのサッカー通と知り合いになった。国境を越えて多くの人と友達になるための私の5Kは「共通点、きっかけ、根性、聞く耳、謙虚さ」。言葉(言語)は、って?それは根性でカバーされるのだ。
 


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