COLUMN
1 在日タイ大使館へ出生届 2 タイ国籍の取得 3 父母婚姻前の出生
4 外国人母行方不明の場合の認知 5 前婚の嫡出推定が及ぶ子 6 その他

 

 5    出生子の国籍(日本で出生の場合)
更新日時:
2003/04/17
 
 
1、在日タイ国大使館への出生届必要書類
 
 @) タイ人の親について
   1)パスポート
   2)身分証明書
   3)住居登録証
   4)父母子3人が一緒に写った写真
   5)婚姻証明書
 A) 子について
    出生届記載事項証明(外務省の認証要)
 B) 日本人の親について
    パスポート、運転免許証、保険証のいずれか
 
 
2、タイ国籍の取得
 
 タイ側に出生届を提出するということは、タイ国籍を取得するということです。
 そんなもの必要ないではないか、と思われる日本人の父親が多くいらっしゃるかもしれません。しかし、タイ国籍を取得しておくということは重要な意味を持ちます。前にも述べたように、万一、子供の父親が早死でもしたら、あるいは離婚でもしたら、母親と子供はタイに帰国するかもしれません。その場合どうしても子供のタイ国籍は必要です。そうでなくとも、タイに長期滞在することはありえるわけで、その場合には当然ビザの心配がないことになります。タイのパスポートも取得できますから、日本の入管を通るときは日本の、タイの入管を通るときはタイの、それぞれパスポートを使用すればどちらの国にも、無制限で居住できるわけです。
 
 
3、父母婚姻前の出生
 
 前にも述べましたが、日本人がオーバーステイの外国人と恋愛することも、当然あることです。そして二人がめでたく入籍する前に、お子さんが生まれてしまうケースも少なくありません。
 そうなってくるとちょっと面倒になってきます。
 
(1) 胎児認知 
 
 外国人の恋人が妊娠してしまった場合、まずはとにかく、胎児認知の手続をしてあげることです。これはそんなに難しくありません。戸籍役場に行って、どの外国人の胎児を認知するのか、記載して提出することになります。1)胎児の母親の国籍証明書と2)独身証明書が必要です。また、3)母親が「胎児認知に同意する」という署名も必要です。
 特に、不幸にも、その父母が婚姻の見込みがない場合には、子供が日本国籍を取得するには、胎児認知しておかないと帰化以外に方法がありません。
 戸籍役場の不勉強などで、認知届はできないとか、その届は婚姻届ほど難しいとかいう誤った指導がなされる場合がありますが、そんなときは役場と交渉しますので、ご連絡ください。
 
(2) 準正による国籍取得
 
 オーバーステイの外国人と恋人になり、一緒に生活し、そして子供が生まれ、それでも、何も手続を取っていない。どうしたら良いかわからない。そんなケースも少なくありません。
 婚姻届については前に述べましたが、お子さんについて、何も手続をしていない場合には、国籍法3条に定める準正による国籍取得という手続があります。これは、子供の認知と父母の婚姻によって、子供が嫡出子の身分を取得した場合には、日本国籍が取得できるということです(父日本人、母外国人の場合です)。
 
(@)認知届
 まず、(出生後の)認知届を提出します。
 必要書類は次のとおりです。
 1)出生届記載事項証明書(子)
 2)外国人登録証明書及びカード(子)
 3)外国人登録証明書及びカード(母)
 4)パスポート(母)
 5)印鑑及び身元を証明するもの(父)
 
 この段階で、日本人の父親は自分の子供を外国人として登録することに抵抗があるようです。しかし、一般に、お子さんの外国人登録は手続上必要とされています。次に述べる国籍取得届が完了するまでの短い時間だけでも、登録をしておくべきでしょう。
 それに、出生届をしておけば、外国籍のままでも、乳幼児の公的扶助などを受けられますから、きとんと手続するべきです。
 また、出生届は、たとえ外国籍のお子さんでも14日以内に届出をしなければならず、それに遅滞すると過料の制裁がありますから、その意味でもきちんと届を出しておくべきです。
 
(A)国籍取得届
 
 婚姻(日本側だけで大丈夫)と認知の手続が完了し、戸籍記載ができたら、お子さんの外国人登録地を管轄する法務局に国籍取得届を提出します。その必要書類は次のとおりです。
 
 1)出生届記載事項証明書(子)
 2)外国人登録証明書及びカード(子)
 3)外国人登録証明書及びカード(母)
 4)パスポート(母)
 5)印鑑及び身元を証明するもの(父)
 6)戸籍謄本(父)
 7)戸籍謄本(父の婚姻前のもので、子の出生当時、父が日本国籍であ
  った旨の証明となるもの)
 8)住民票(父)
 9)写真(父母子3人で写っているもの)5センチ四方1枚
 
 これを法務局に提出し書類を受け取ってもらえれば、約1ヶ月で国籍証明書が法務局から交付されます。
 それを戸籍役場に持参し、戸籍届をします(この戸籍届も国籍取得届と呼ばれており、紛らわしいです)。同時に外国人登録証を返納します。
 子供さんの氏は、国籍取得届完了前までは母の氏、完了後は父の氏となり、父の戸籍に入籍となります。
 
 
4 子の出生後、外国人母が行方不明となった場合の認知(03/04/17記)
 
 現在、進行中の実例です。
 
・ 日本人男とタイ人女が数年同棲の末、子を出産した。
・ 胎児認知はしなかった。
・ 母は、不法入国者で外国人登録もしていなかった。
・ 血縁上の実父が、同居人として子の出生届を提出した。
・ 父は、認知届を提出しようとしたが、母の国籍証明書と独身証明書の提出を求められ、それが添付できないため認知届も提出できなかった。
・ 子が6歳のとき(3年前)、母は行方不明となった。
・ 現在、血縁上の実父と子、父の新妻が一緒に生活している。
 
 上記のように、日本人男とタイ人女の間に生まれた子を出生後に認知しようとすると、日本の役場は、母の国籍証明書と独身証明書、母が認知に同意する旨の署名を求めるのが普通です。
 
 ・ 母の国籍証明書は、子の国籍の証明のためと下記保護要件確認のためと思われます。
 ・ 母の同意署名は、保護要件のためと思われます。
 ・ 独身証明書は、他の男の嫡出推定がないこと(非嫡出の要件)であろうと思われます。
 
 ところが、法務局と談判の結果、下記法務省回答を見つけてくれました。
 
 これによると、
 
<一般論>
日本人が外国人(出生後、未成年)を認知するときの添付書類
 ・ 子の出生証明書及び国籍証明書
 ・ 子の本国法上の保護要件を満たしている旨の証明書
  (→認知者の本国法(日本法)を準拠法とする認知の場合 ※)
 
 ※ 法例18条により、子の本国法上「其子又ハ第三者ノ承諾又ハ同意アルコトヲ認知ノ要件トスルトキ」は、それを具備する必要があり、この要件を「認知に於ける子の保護要件」という。
 もし、タイ国法が、認知に際し、タイ人母の承諾・同意を求めるなら、それは保護要件となる。
 
<平成6年5月10日付け法務省民事局第二課長回答>
1−(1)本件では、子の国籍証明書が添付されていない。
  (2)子の母が行方不明である旨及び国籍証明書を提出できない旨の父の申述書が提出されている。
 → 出生届などの記載から、母はタイ人と認められる。
 → タイ国籍法7条1号では、母タイ国籍の場合、子はタイ国籍となる。
2 タイ民商法には、法例18条の保護要件に該当する規定はない。
  (1548条を検討するが、結局保護要件ではないとした。)
以上により受理して差支えない。
 
 
 これをなるべく易しく書くと、タイ人母が行方不明になってしまった場合、その子を日本人父が認知するには、出生届と「母が行方不明である旨及び国籍証明書を提出できない旨の申述書」で足ることになります。
 
 私にとっては大変な朗報であり、かつ、現場の戸籍実務がこの回答に従っていない点を是正させなければならないと痛感している次第です。
 
 
5、前婚の嫡出推定が及ぶ子
 
 前にも記しましたが、外国人の恋人(女性)が、前に結婚したことがあると、その離婚(あるいは前夫の死亡など)から、一定期間経過しないと、次の婚姻ができないというのがほとんどの国の立法例です。タイ人女性の場合は、離婚から310日を経過しないと、原則として次の婚姻ができません。それは、子供が前の夫の子か、今度の夫の子か、わからなくなってしまうからです。そして、子供の身分を安定させるために、他の多くの国の立法例とほぼ同様に、タイ国民商法第1519条には、
 「婚姻中又は婚姻解消後310日以内に生まれた子は、夫の子と推定する。」
と定められています。
 そこで、この推定の及ぶ期間に生まれたお子さんは、前夫の子と推定されますので、それを覆すために、親子関係不存在確認訴訟(場合によっては嫡出否認訴訟)という裁判をやらなければなりません。詳細の解説はここでは致しませんが、前夫が外国人で海外居住の場合、日本でこの訴訟を提起するとすれば、少なくとも2年は掛かると言われています。ですから、この場合、裁判は、相手となる前夫の本国で提起した方が解決が早いように思われます。私も現在このような案件の相談を受け、前夫の住むタイでの裁判の相談も受けております。
 
 
6、その他
  
 そのほか、お子さんの氏の問題や、健康保険の問題など、様々な困難な問題があります。
 それらについても段々と書き続けていこうと思っています。
 
 戸籍もなく、国籍もなく、外国人登録もなく、健康保険もなく、そういうかわいそうなお子さんが沢山いるのを目にしています。
  
 もしこれをお読みになったあなたが、何か困っていることがおありでしたら、何でもお尋ねください。わかることは説明しますし、わからないことも、良くお調べしてお答えします。



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