COLUMN
1 はじめに 2 婚姻手続のやり方 3 待婚期間
4 待婚期間について(追記) 5 妻の氏

 

 1    国際結婚(タイ国籍の配偶者)
更新日時:
2003/04/24
 
 
1、はじめに
 
 私は、平成7年に仕事の関係で知り合った妻(タイ国籍)と、平成9年7月に婚姻の届出をしました。同年12月に長男が出生しております。平成9年から10年に掛けて、妻の出産や妻の母の重病・葬儀などあり、1年近くタイ国に在住しました。
 妻が来日したのは平成10年6月で、平成14年3月永住許可を得ました。長男は日・タイ二重国籍です。
 このコラムは、私の実体験をベースに、日本国籍の夫とタイ国籍の妻との国際結婚の進め方並びにそれに関連する様々な問題を記したものです。
 皆様の反響により、適宜、加筆を続けております。
 
 
2、 婚姻手続のやり方 『ガルーダの認証』
 
(1) タイ国は、ヘーグ国際私法会議条約未加盟国です。よって、外国の地方官署発行の書面を直ちにその国の発行した書面として認めない、すなわち、地方官署発行の書面に当該国の外務省の認証を経ないと婚姻関係の書面でも使用することができないことになっています。
 タイ国民との婚姻手続で、皆さんが大変苦労されるのは、俗に、
『ガルーダの認証』と呼ばれるタイ国外務省の認証手続です。
 タイ国籍の方との婚姻手続は、
1)日本で先に婚姻手続をして、タイ側にその報告をする方法
2)タイで先に婚姻手続をして、日本側にその報告をする方法
がありますが、1)の方が簡略なので、ほとんど皆さん、この方法によっています。
 
(2) そこで、この方法ですと、少なくとも、タイ人側の婚姻要件具備証明書(タイ国法において婚姻することに障害がない旨の証明)や住居登録証 (住民票と戸籍を兼ねたようなもの)のタイ語原文と英訳文を作成し、それをタイ国外務省に持参して認証をもらう必要があります。これをガルーダの認証と呼んでいます。この他、認証は受けませんが日本語訳も必要です。これらの書類を添付して、日本の戸籍役場へ提出することになります。
 
(3) 日本側で作成した婚姻関係書類も日本の外務省か大使館で認証を受ける必要があります。例えば、日本で婚姻が成立した旨が記載された戸籍謄本を在タイ日本大使館へ持参すると、大使館は、英文の婚姻成立証明書を発行します。これと同一内容のタイ語訳文を用意し、タイ国外務省の認証を受けます。この認証を受けた書面をタイ国の地方官署(郡役場)へ持参すると外国(日本)で婚姻した旨が記載された家族身分登録票と記録書面が発行されます。
 以上、あらましですが、これで、両国側の婚姻手続が完了したことになります。
 日本の戸籍謄本から作成される婚姻証明書英文フォームタイ語訳フォーム
 この手続だけでも、きちんと処理するのは、なかなか骨の折れる作業です。時間もお金も必要です。何度も日本とタイの間を往復しなければなりません。訳文に齟齬がある、なかなか認証をもらえないなど、遅々として手続が進まず、生まれてきた子は無国籍という場合が多いのはそれだけで頷けてしまいます。そうならないようにちゃんと手続しましょう。
 
(4) なお、日本に滞在しているタイ人は、在日タイ国大使館へ婚姻の届出をすることができます。タイ側へ報告的届出を提出する方法は、次のとおりです。
 
<在日タイ国大使館への婚姻届提出書類>
    00/11/16在日タイ国大使館回答
1) パスポート及びそのコピー2通
2) 身分証明書(または住居登録証)及びそのコピー1通
3) 戸籍謄本(外務省の認証要)及びそのコピー2通
4) 写真1枚
5) 本国郡役場へ届け出る代理人を選任すること。
 
 
3、待婚期間(03/04/24改)
 
(1) 女性は、以前に結婚したことがあると、その離婚(あるいは前夫の死亡など)から、一定期間経過しないと、次の婚姻ができないというのが多くの国の立法例です。これを待婚期間と呼んでいます。
 
(2) 日本の民法はこの期間を6ヶ月と定めています。一方、タイ国民商法はこの期間を原則として310日と定めています。このように両国の法規定が異なる場合ですが、婚姻の効力に関しては、双方要件といい、重きに従う法理によるものとされています。したがって、双方の国の待婚要件を具備しなければならないことになります。
 
(3) ただし、
 
<タイ国民商法典 第1453条>
待婚期間
1 前婚解消日から310日
2 解除条項
  ア 子が1の期間内に出生した場合
  イ 離婚した夫婦間で再婚する場合
  ウ 適法に開業している医師が発行した女が懐胎していないことの証明が
    ある場合
  エ 女につき婚姻を許可する裁判所の命令がある場合
 
という規定ですので、この310日は短縮可能です。ことに(ウ)の医師による証明は魅力的な規定といえます。日本でも同様の法改正をして欲しいところですが、ここでいう医師とはタイの医師かという疑問がありました。
 その点は、タイ大使館のサイト http://www.thaiembassy.jp/consular/marriage/j-frame.htmで解決しました。
 
 大使館が発行する「婚姻要件具備証明」の解説部分です。
 「相手の女性がタイ国籍者で、離婚後310日経っていない場合は妊娠していないことを証明する診断書を提出してください。日本語の診断書の場合は英文に訳してください。」
とありますので、日本の医師の証明で良いことになります。
 
(4) そんなことで、タイの310日は、日本の医師の妊娠していない証明で、理論上はいくらでも短縮可能となります。
 
(5) そうすると、日本の法律との双方要件で、6ヶ月プラス医師の証明で、再婚可能と解釈できます。渉外戸籍の専門家も同様の見解のようです。
 
(6) 次に、日本の法律の待婚期間6ヶ月が短縮できないか検討します。待婚期間違反は、民法上、取消事由です。無効原因ではありません。取り消されるまでは有効です。待婚期間に違反した婚姻届を、まともに市役所に持っていったのでは、受け付けてくれません。しかし、いったん受け付けてしまったものは取り消されるまでは有効であるとともに、創設的届出ではなく報告的届出であれば、受理せざるを得ないことになっています。
 日本に報告的届出をするということは、外国で創設的婚姻届をするということです。ある実務家のアドバイスでは、アメリカ・ラスベガスで婚姻し、日本に報告届をすれば、待婚期間6ヶ月の問題をクリアーできるといいます。
 
(7) また、タイにおいて、タイ式の婚姻を行うのであれば、医師の証明によりいくらでも(6ヶ月未満まで)待婚期間を短縮できることになり、適法に婚姻を成立させることができます。
 上記のとおり、外国において創設的婚姻をなせば、日本側は報告的婚姻届を受理せざるを得ないことになっていますので、何ら問題を生じません。
 
(8) かつてタイ大使館のHPには、タイ人と日本人の間のタイ式の婚姻(創設的婚姻届)を大使館で受理する旨の手続が掲載されていました。
 しかし、この方式は、日本の法律に照らして不適法と考えられます。
 法例13条3項但書の規定によると、「日本における挙行で当事者の一方が日本人の場合、日本の方式によらなければならない」と定められており、この規定に反するものと思われます。
 よって、この婚姻はタイ国では有効だが、日本では無効と解されます(旧法関係で松江家裁昭和40年の審判同旨)。この場合、日本側で有効な婚姻とするためには、改めて日本式の婚姻届を提出せざるを得ないことになりそうです。
 仮に、もし、これを有効と解するなら、在日タイ大使館は「日本ではない」という理屈を唱える以外になさそうですが、前述、松江家裁はこの場合を無効と言っているようです。
 いずれにしても、タイ大使館の薦める方法が日本では無効とされたのでは、迷惑するのは私たち当事者です。適切な対処が望まれるところです。
 本Webサイトのせいか、タイ大使館における日・タイ婚姻の手続は最近削除されました。
 
 
4、待婚期間についてー追記(03/04/24)ー
 
 待婚期間について関心を寄せる人が多いのを実感しているこのごろです。
 そこで、以下を追記します。
 
(1)参照条文
 
 第733条 女は、前婚の解消又は取消の日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
 2 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
 
 第744条 第731条乃至第736条の規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消を裁判所に請求することができる。但し、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
 2 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消を請求することができる。
 
 第746条 第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消の日から6箇月を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消を請求することができない。
 
 条文の意味するところを平易に表現しますと、
1、女性は離婚後6ヶ月を経過しないと、再婚できない。
2、この規定に違反した場合、夫、妻、親族、検察官、前夫から裁判所に対して、取消を請求できる。
3、前婚の離婚から6ヶ月経過したときは、取消権はなくなる。
 ということです。
 
 これを実務的な観点で検討すると、次のように考えられるでしょう。
 前婚の離婚等から6ヶ月以内は、取消権が存在し、上記の者から裁判所に取消を請求するできるとされています。
 しかし、この中で、実際にはだれが婚姻の取消を求めて出訴するでしょうか。
 婚姻の当事者は自ら選択した婚姻であり、自ら取消を求めることは少ないでしょう。
 前夫が再婚後のことにわざわざ裁判まで起こして、取消を求めることはあまりないでしょう。
 検察官は、実務的に、民事訴訟の被告になることはあっても原告になることはありません。
 親族が再婚に反対して訴えを起こすことはありえないではないかもしれませんが、実務では見掛けません。
 仮に訴えを提起したとしても、離婚等から6ヶ月以内に判決確定しなければならないわけですが、そのようなことは裁判実務上極めて困難です。
 
 有力学者の多くは、「待婚期間違反の婚姻は反社会性がなく、仮に取消をしても父性推定の衝突を避けることはできないので、これを削除すべきである。」
 「かえって、スイス民法131条に習い、取消できないものとすべきだ」との立法論を強く唱えております。
 男性優位の古い倫理観の名残であり、また、単なる女性差別であって、憲法14条違反だという意見が有力に主張されるところでもあります。
 
 
5、妻の氏
 
 次に、タイ国籍の妻の婚姻による氏の変更についてです。
 
(1) タイ側の手続
 タイ国において、婚姻が成立すると、最初にタイ国で婚姻の手続をした場合には、婚姻登録証が作成され、私がやったように先に日本で婚姻を成立させると外国(日本)において婚姻した旨の家族状況登録簿などが作成されます。いずれのケースでも、それと同時に、住居登録証に記載されている敬称をMISSからMRSへ変更し、氏を出生時の氏から、夫の氏への変更を記載します。
 つまり、諸国の立法例から見ても珍しいように思われますが、タイ国では、婚姻により夫の氏を称すると定められております。妻の氏を称することも、夫婦別姓も、法的に認められていないようです。
 これによって妻は、タイ国法上、MANEERAT姓からSHIMADA姓に変更されております。
 
(2) 日本側の手続
 ところが、わが国の戸籍上では、当然ながら、婚姻の事実は記載されていても、改氏の事実は、別途届出が必要となります。この届出を完了させるまで、戸籍上は旧姓のまま扱われるわけですから、タイではSHIMADA姓、日本ではMANEERAT姓ということになります。
 私は、子供の出生届までの間にこの手続をやっておかなかったので、婚姻届出後でも出生届の母欄はMANEERAT姓を用いないと受け付けてもらえませんでした。
 この妻の改氏手続も、改めて改氏になった住居登録証を英訳、和訳の上、ガルーダの認証を得て、戸籍役場に届け出ることになります。婚姻前から、パスポートを所持している場合は、パスポートの改氏をした上で、戸籍役場に届け出ることもできます。
 
(3) 参考
 ちなみに、タイ人妻の場合は上記のとおり日本人夫の氏を称することになりますが、夫婦別姓の国もあるし、夫婦いずれかの氏を選択することができる立法例もあります。また、タイ人が夫で日本人が妻の場合には、妻が夫のタイの氏を称することになります。
 そのような場合に備えて、戸籍法107条2項は、婚姻後6ヶ月以内は、裁判所の許可を得ないで、日本人配偶者が外国人配偶者の称する氏に変更する旨、届け出ることができると定めております。
 これは上記、タイ人妻の氏の変更届とは、全く意味が違う(日本人が氏を変更するわけではない)のですが、日本人夫の氏に変更した外国人妻の氏の変更届を前記戸籍法の規定と勘違いして、『6ヶ月を過ぎたから、裁判所の許可が必要』などという間違った指導をする戸籍役場もありますから、ご注意ください。
 タイ人妻の氏の変更届には、それ自体の時間の制約はありません。
 
(4) 旅券の氏のみ変更
 タイへの婚姻届をしていなくても、タイ人が大使館に行けば、パスポートの改姓だけを行うことができます。
 ただし、必ず、追って本国に婚姻報告届をするよう指導されます。
   <必要書類>
   ・外務省認証済み戸籍謄本
   ・パスポート及びそのコピー
   ・写真 1枚証明用
 *外務省領事移住部政策課証明班



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